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2024年度一級建築士実地試験の総評
令和6年10月20日、 1級建築施工管理技士技術検定 第二次検定が実施されました。
下記に「各問ごとの講評」と「総評」を記載致します。

【問題1 経験記述】

本年7月10日に、試験実施機関である一般財団法人 建設業振興基金から発表された「試験問題の見直しについて」の内容のとおり、工事概要は予め問題用紙に提示されました。提示された工事概要は、具体的に、かつ、広範囲にわたり記載されており、実際の建築物の「仕様書」の様なものでした。かなり詳細で広範囲にわたる記載がある工事概要であった為、受験生自身が経験した工種を見つけやすかったのではないかと思います。ただし、提示された工事概要を読み取り、どのような建物の工事であるかのイメージを浮かべることができないと、解答しづらかったのではないかと思います。

予想出題テーマとしましては、5年間出題されていなかった「建設副産物対策」と、昨年出題されなかった「施工合理化」が挙げられていましたが、今年度は「施工合理化」の出題となりました。設問1においては、要求された記述内容はより具体的に絞られ、近年「働き方改革」が実施される傾向にある中で、「現場作業の軽減策」として有効と思われる三つの提案についてのものでした。又、記述内容についての条件が例年よりも細かく示され、記述しようとする内容が、条件を満たす内容であるか否か、迷われた方もおられたかと思います。が、冷静に読めば「現場作業の軽減にはなるが、必要のない内容・変更確認申請手続きが必要となる内容・逆に工期遅延につながる内容・工程短縮は図れるが作業軽減にならない内容・設備工事の内容、以上の5項目は不可とする」と読み取ることができます。

設問2においては、「働き方改革」と密接な関係のある「時間外労働」に関する問いかけで、初出題の論点でした。現在の建設業界を取り巻く環境に焦点を当てた時事的な論点といえます。受験生各自が日常直面している問題であるため、回答し易かったのではないかと思います。ただし、常日頃どれだけの問題意識をもって業務に携わっているか、自分の考えを文章として表現する力が有るか、以上の両方が欠けていると解答しづらい設問であったといえます。

出題形式見直し後初めての経験記述の設問は、単純な暗記や、一夜漬け的な学習では太刀打ちできず、受験生各自の施工管理業務への取り組み方、日頃からの問題意識の有無が試されるものとなり、試験実施機関の目的である「模範解答例の暗記等ではなく、自身の経験に基づかなければ解答できないような設問とする」ことは、ある程度は実現できたのではないかと考えます。

【問題2 設備又は機械の安全使用について】

3問全て、過去問からの出題でした。
・バックホウ、高所作業車 → H28
・仮設電力設備 → H27

過去問を万遍なく学習していれば、比較的解答し易かったと思います。

【問題3 工程管理】

例年通りに、ネットワーク工程表の出題でしたが、従来と異なり、ダミーアローを読み解く設問が無く、その代わりに、トータルフロートを算出する必要がありました。又、施工条件が但し書きとして付記されていて、一見、複雑な問題に見えてしまったかもしれません。が、ネットワーク工程表を読み解くための基本的な知識があれば解答できたと思われます。

【問題4 仕上施工】

4問全て、過去問からの出題でした。

・「有機系接着剤を用いる外壁タイル張り」 → R2
・「アルミニウム製笠木」 → H30通常試験
・「セルフレベリング材」 → H28
・「ビニル床シート」 → H24

上記が過去の出題歴となりますが、問題文に指示されている「記述内容についての但し書き」に従って解答が記述されているかがポイントとなります。今後も「記述内容についての但し書き」は、注意深く読み取る必要があります。

【問題5 躯体施工(五肢択一)】

第7問の「寒中コンクリート」のみ新規出題となりましたが、その他の設問は基本的な事項を習得していれば対応できる内容であり、過去問を繰り返し練習していれば容易に正答肢に辿り着けられたと思います。

【問題6 法規(五肢一択)】

・建設業法第24条の8 : H22とH29に既出の問題です。
・建築基準法施行令第136条の6 : H28とR3に既出の問題です。
・労働安全衛生法第71条の2 : 初出題の条文です。この条文を読んだことがない受験生にとっては、難問であったと思います。

【総評】

今回の試験の各問題の難易度は下記のとおりです。

・問題1           → やや難
・問題2           → やや易
・問題3           → やや難
・問題4・問題5       → 易しい
・問題5           → やや易
・問題6           → 標準


出題形式が変わったことにより、戸惑う問題も若干含まれていましたが、総じて標準的な難易度であったといえます。

1級建築施工管理技士講座

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